平成8年度は、イヌのβアミロイド症とアポリポタンパクE(Apo E)に関する生化学的並びに免疫組織化学的な検討が行われるのと同時に遺伝子型検索のため、PCR装置の設置および材料収集が行われた。 生化学・免疫組織化学的検討では、ヒトのApo Eに対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体をそれぞれ用いて、Western Blot法により血清中のApo Eの分子量を測定し、イヌのApo EがヒトのApo Eと同様分子量約35KDaであることを明らかにした。また、老人斑や脳血管アミロイド症に罹患したイヌの脳組織を凍結切片や種々の固定液で固定したパラフィン切片として、Apo E抗体を用いて免疫組織化学的に検討した結果、脳に沈着したアミロイドがβタンパクとともにすべてApo E抗体に陽性を示し、かつ一部の瀰漫性斑diffuse plaquesが凍結切片やブアン固定パラフィン切片上で陽性を示すことを確認した。以上の結果はヒトのアルツハイマー病で得られた知見とほぼ一致するものであるが、ヒトでは殆どの瀰漫性斑がApo E陽性であるのに対し、イヌの瀰漫性斑は、多くがApo E陽性であることが異なっていた。以上の知見についてはすでに海外の学術雑誌に論文として投稿し受理されている。 現在は、遺伝子型解析のため、各種動物の新鮮凍結組織の収集とPCRの環境設定を行っていたが、1昨年度より依頼していた、アメリカ合衆国コ-ネル大学への海外研修が本年10月に受理されたため、宮崎大学における研究継続ができなくなった。今後は、本年10月10日より渡米し、コ-ネル大学において引き続き本研究を継続する予定である。
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