犬を好んで寄生するクリイロコイタマダニの寄生および生体抽出物が、牛と犬の免疫機能、特にリンパ球および好中球機能に対して、それぞれin vivoおよびin vitroにおいてどのような影響を及ぼすかを明らかにするとともに、宿主免疫機能に影響を及ぼす抽出物について分析することを目的として研究を実施した。 クリイロコイタマダニ寄生により、寄生犬末梢血リンパ球のマイトゲンに対する幼若化反応および末梢血好中球の化学発光能は抑制される傾向が認められた。また、末梢血好中球のC5aに対する走行能に変化はなかったが、自己血清に対する走行能は低下したことから、血清中の走化因子の濃度または活性が低化することが考えられた。 次にクリイロコイタマダニ唾液腺のリン酸緩衝液抽出物を用いて、in vitroにおける犬と牛のリンパ球幼若化反応に及ぼす影響を調べたところ、犬と牛のリンパ球幼若化反応はともに唾液腺抽出物の蛋白質濃度依存性に抑制されることが明らかとなった。しかしながら、好中球の化学発光能および走行能に対しては抑制作用は認められず、in vivoで見られた化学発光能の抑制は唾液腺抽出物の直接的な影響ではないことが考えられた。クリイロコイタマダニの唾液腺抽出物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析したところ、20から100キロダルトンの間に数本の主要な蛋白質バンドが認められたが、これらの蛋白質と免疫抑制の関係については明かにすることはできなかった。
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