【目的】Salmonella Enteritidis (SE)は他の血清型に比べて卵から多く検出されるが、その汚染機序には不明な点が多い。そこで、卵管内、クロアカ内あるい静脈内へSEの投与を行い、高率に汚染卵を産出する実験モデルの作成を試みるとともに、汚染卵産出の機序について検討した。 【材料と方法】37〜47週齢のDeKalb-TX35 (White-Leghorn系)を用い、10^7CFUのSEを、卵管内に1回投与した群、3日間連続して卵管内に投与した群、クロアカ内1回投与群、および静脈内1回投与群の4群に分けた。投与後毎日各群から得た卵を回収し、卵殻の外面、内面、および卵内容に分けて検査した。また、投与後4日目と7日目に各群剖検し、卵巣、卵管(漏斗部、膨大部、狭部、子宮部、膣部)、卵管内の卵、クロアカ、肝臓、脾臓から材料を採取してSEの有無を調べた。卵管各部とクロアカについてはスワブ材料を採取してSEを定量的に測定した。 【結果】卵管内投与群においては両群ともクロアカ内投与群よりもSE汚染卵数が多く、卵内容からSEが検出された例もあった。3回連続卵管内投与群では投与後4〜7日の間で1回投与群よりもSE汚染卵数が多かった。卵管内投与群とクロアカ内投与群の両群では卵管下部からSEが検出され、とくに、3回連続投与群では膣部での検出率および菌数がともに高かった。剖検時に採取した卵管内投与群の卵管内の卵にはほとんどSEが検出されなかった。静脈内投与群から得た卵では卵内容からSEが検出された。クロアカと盲腸からは、どの群からも高率にSEが検出された。 【考察】卵の内部から検出されるSEには上部生殖器、とくに卵巣経由で侵入する場合と、卵管下部で卵殻に付着した後に侵入する場合があると考えられた。本実験で用いた卵管内投与群は、従来のクロアカ内投与、静脈内投与に比べ、汚染卵の産出数が高く、鶏卵汚染メカニズムの解明に有用な方法であると考えられた。
|