研究概要 |
3T3-L1細胞を安定して脂肪細胞に分化させるには厳密な条件設定が必要である。今回は国立健康栄養研究所江崎治部長より状態の良い3T3-L1細胞を入手し、当研究室での実験系を確立した。脂肪細胞への分化はコンフルエントにした3T3-L1細胞を2日間0.5mM3-isobutyl-1-methyl-xanthine/1μ M dexamethasone/DMEMで培養し、さらに2日間1μg insulin/DMEMで培養することにより行い、脂肪滴が現れて10日目のグルコーストランスポーターGLUT4が十分産生されている細胞を用いて実験を行った。なお、二重蛍光抗体法を使用する際にはLR-whiteの準超薄切片ではバックグラウンドが多かったので、凍結準超薄切片を用いた。まず、3T3-L1脂肪細胞を1μM insulinで処理することによりGLUT4が細胞表面に移行することを観察した。次に、GLUT4の小胞とpHとの関連を調べるために、3T3-L1脂肪細胞をinsulinとDAMP(3-(2,4-dinitroanilino)-3'-amino-N-methyldipropylamine)で同時に処理し、二重蛍光抗体法を用いて検鏡した。GLUT4とpHの低い箇所を示すDAMPの分布には明瞭な一致は観察されなかったが、10μM,25μM,50μM,100μMの濃度でDAMPを加えると濃度が高いほどGLUT4の細胞表面への移行が阻害される傾向がみられた。この結果はGLUT4のトランスロケーションが細胞内小胞のpHを中和することにより阻害される可能性を示唆している。
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