クロモグラニン・セクレトグラニン蛋白群(グラニン蛋白群)は、その生理的機能に関してはいまだ不明の点が多いが、内分泌細胞の分泌顆粒内に局在するという共通の性質を有している。本研究ではこの性質に着目して、特別なcofactorなしに緑色螢光を発する発光クラゲの細胞質中の蛋白、GFP(Green Fluorescent Protein、238アミノ酸残基)とグラニン蛋白との融合蛋白のcDNAを構築し、蛋白分泌性の内分泌組織由来の培養細胞株に導入して、「光る分泌顆粒」を持つ細胞の作製を試みた。 まず、この蛋白群に属する主要な3種類の蛋白、クロモグラニンA(CgA)、クロモグラニンB(CgB)、およびセクレトグラニンII(SgII)のカルボキシル末端にそれぞれGFPを融合させた蛋白のcDNAを構築し、ラット褐色細胞腫由来の培養細胞株PC12細胞に遺伝子導入法によって発現させた。融合蛋白の発現の程度はNorthern Blot法で確認し、内因性のグラニン蛋白に匹敵する発現量をもつクローンを単離することができた。この樹立された細胞クローンにおける融合蛋白の細胞内局在を抗GFP抗体による免疫染色で調べたところ、GFPをどのグラニン蛋白に融合させた場合でも、融合蛋白は内因性のグラニン蛋白と同様に分泌顆粒に局在していた。また免疫沈降法によって、融合蛋白が分泌刺激に応答して培地中に放出されることも確認された。ところが、生きたままのPC12細胞でGFPの発光が観察できないかどうか、螢光顕微鏡及びレーザー共焦点顕微鏡を用いて検討しているが、今までのところ成功していない。この原因として、分泌顆粒内のpHやカルシウム濃度などの微小環境が今回使用したGFPの発光に適切でない可能性が考えられたため、融合蛋白中のGFPを発光強度が高い改変型GFPに置換して、現在さらに検討を続けている。 なお、以上の研究成果の一部は、第102回解剖学会総会(1997年3月、愛知)で報告した。
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