研究概要 |
甲状腺C細胞は血清中のCa^<2+>値を低下させるカルシトニンなどのペプチドホルモンを分泌する細胞である.当研究室の亀田はイヌの甲状腺よりC細胞特異的モノクローナル抗体を単離した(Kamecat:J.Histochem.Cytokem.40:541-553,1992).この抗体はサルやウサギの甲状腺,あるいはヒト髄様癌でも免疫反応があった.また,C細胞において高Ca^<2+>血状態にしたイヌではカルシトニンと同様に免疫反応が著しく低下した. 今回,我々はこの遺伝子を単離することを計画した.この抗体の免疫反応は生後比較的若い時期に強いことが分かったので,cDNAライブラリーを作成するために生後3カ月のイヌを使用した.これより甲状腺を摘出しtotal RNAを抽出した.total RNAよりpoly(A)^+RNAを選択しcDNAを合成した.それをλgt22に組み込み,ファージにin vitroパッケージングした.約1×10^6個のファージプラークに対してイムノスクリーニングを行ったところ,1次スクリーニングで27個の陽性クローンを得た.その中の7個が2次スクリーニングで陽性反応を示した.現在,3次スクリーニングにより得られた単一プラークよりファージDNAを調製し,塩基配列を決定している.今後の展開として,この遺伝子の塩基配列が既知の遺伝子と相同性があるか,甲状腺以外に発現している器官が存在するかを調べるつもりである.またカルシトニンと類似した免疫反応を示すので,in situハイブリダイゼーションによる甲状腺の組織内における発現状態は興味のあるところである.
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