上皮細胞の漿液性分泌機能に関与する外向整流性CIチャネル(ORCC)は細胞内に存在する何らかの物質により阻害されることが知られているがこの因子は未だに明らかにされていない。本研究の目的はこの因子の同定を行うことであった。この未知の細胞内に存在する内因性阻害因子を同定するために、ラットの小腸より細胞質画分を抽出し、ORCCに投与したところ、濃度依存性にチャネルの阻害効果が認められた。また他の臓器(肝臓、腎臓、脳)の細胞質画分と比較すると小腸で最も高い阻害効果が認められた。イオン交換樹脂によるカラム精製によりこの阻害因子は陰電荷を持っていることが明らかになった。更に分子量を検討すると1kDaから10kDaの間であることも明らかになった。また、ラット小腸よりCsCl法を用いてmRNAを抽出し、アフリカツメガエル卵母細胞に注入すると、その卵母細胞の細胞質画分にはORCCの阻害効果が認められたのに対して、遺伝子を注入しない卵母細胞ではその阻害効果は低かった。このような実験からORCCに対する内因性阻害因子はmRNAにより発現するところの蛋白あるいはペプチドであることが想定された。現在さらに、このORCCに対する内因性阻害因子の同定を進めている途上であるが、現段階での研究結果については平成8年度生理学会で報告され、現在論文準備中である。
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