研究概要 |
イヌ心室性激発活動誘発不整脈モデルを開発し、単相性活動電位(MAP)を用い遅延後脱分極(DADs)の検出を試みた。雑種成犬をpentobarbitalで麻酔し、血液をヘパリン化後、供血犬とした。心室筋標本は、別の雑種成犬の心室中隔と右室前乳頭筋を用いて作製し、供血犬の動脈血で交叉潅流した。標本をアクリル板に固定後、ヒス束領域にペーシング用の銀双極電極を縫着し、乳頭筋基部にMAPカテーテルを接触させた。MAPおよび乳頭筋収縮力の監視下で、以下の検査を順次施行した。(1)標本に刺激間隔600-300msecで15回の連続刺激を加え、5秒間の無刺激時間をおいてまた刺激するという電気刺激を繰り返し行ない、電気生理学的性質を評価した(n=8)。(2)供血犬に中毒量のウアバイン(40-45μg/kg)を静注し、標本に上記の電気刺激を加え期外収縮を誘発することにより電気生理学的性質を評価した(n=8)。(3)DADsを抑制するとされている薬物(verapamil,ryanodine,TTX,lidocaine)を標本の栄養冠動脈に直接投与し、期外収縮の薬理学的反応を評価した(n=4-6)。ウアバイン投与前の標本の自発拍動数は40回/分であり、刺激間隔が短いほど自発収縮開始までの連結期は延長した(overdrive suppression)。ウアバイン投与10-20分後より刺激終了直後に常に期外収縮が1-3個発生した。連結期は自発拍動周期より短縮しており、刺激間隔が短いほど連結期は短縮し、期外収縮数は増加した(overdrive excitation)。DADs様MAP波形は全例に観察され、電気刺激中に乳頭筋の微小後収縮を4例に認めた。薬剤投与により、DADs様波形と微小後収縮は消失、連結期は延長し、期外収縮数は減少した。心筋標本に発生した期外収縮は電気生理学的および薬理学的特徴よりDADsに引き続く激発活動(triggered activity)を起源に発生していると考えられた。
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