本研究では、B細胞の分化初期に発現するKruppel型Znフィンガー転写因子の遺伝子を単離・解析することを目的とし、モデル系としてLPSとIL-4で刺激したマウス脾細胞から、保存された配列を標的としたRT-PCR法により効率的に遺伝子単離を行なうシステムの確立を試みた。まず標的配列に対応する混合プライマーに、アンカー配列を付加したAnchored PCRを行ない、、目的とするZnフィンガー遺伝子を特異的かつ効率よく増幅することを可能とし、さらにベクターを改変し挿入する遺伝子とLacZ遺伝子の読み枠を合わせ、目的とする組み換え体をより効率よく選別できるようにした。現在までに65種類のZnフィンガー遺伝子を単離し、そのうち62種は未知であった。次にこれら多くのクローンの中から、特定の分化段階や刺激によって特異的に発現するようなものを選択するために、LPS/IL-4刺激あるいは無刺激のマウス脾細胞から、それぞれ同様にZnフィンガー遺伝子をRT-PCRにより調製したものけプローブとして、刺激した細胞由来の遺伝子ライブラリーをスクリーニングした結果、刺激により有意に発現が増強される遺伝子を単離することができた。この遺伝子は細胞癌化との関連性が示唆されており、機能的に大変興味深い。さらにこの遺伝子を含むいくつかのクローンの全長cDNAを単離したところ、Kruppel型Znフィンガー転写因子のサブファミリーにおいて、転写を抑制あるいは活性化することが示唆されている遺伝子の機能領域と、高い相同性を有する3つの新しい遺伝子が存在することがわかった(論文投稿中)。今後は、B細胞の初期分化をin vitroで誘導できる骨髄細胞あるいは胚性幹細胞培養系のようなきわめて少ない細胞を取り扱う系から、この高感度かつ簡便なZnフィンガー遺伝子の単離および選択システムにより、実際に新しい遺伝子の単離を試みるとともに、本研究で単離した遺伝子の転写に対する調節機能に関しても解析を行なっていく予定である。
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