研究概要 |
本研究では、発熱についてアラキドン酸カスケードを活性化する機序を更に明らかにするために、新しいタイプのシクロオキシゲナーゼ(COX-2)の誘導と発熱の関連を調べた。 ラット腹腔内にLPSあるいはインターロイキン-1を投与した後、発熱の潜伏期、上昇期、プラトー期及び下降期に灌流されたラット脳のCOX-2に対するin situ hybridizationの結果を解析し、発熱と平行して脳における二つパターンのCOX-2 mRNA発現が誘導されたことがを判明した。一つは神経細胞に、もう一つは血管細胞に誘導された。平成8年度には、COX-2 mRNAを発現している血管細胞の同定を行うために、血管内皮細胞マーカーとして、intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1) mRNA,interleukin-1receptor (IL-1R1) mRNAを用いた。細胞マーカーとなるmRNAに対するin situ hybridizationをCOX-2 mRNAのin situ hybridizationと隣接切片で行った。その結果、COX-2 mRNAシグナルとICAM-1シグナル、COX-2 mRNAシグナルとIL-1R1 mRNAシグナルは同じ細胞に局在した。そして、COX-2 mRNA陽性細胞は血管内皮細胞であることが判った。同時にIL-1βによって誘導された血管内皮細胞にIL-1のレセプターがあり、LPSがIL-1を通してCOX-2 mRNAを誘導することを示唆した。更に、神経細胞と血管内皮細胞にCOX-2の発現量と発熱量の関連を、麻酔の方法とLPS耐性モデルラットを使って調べた結果、LPSにより誘導された発熱の度合いと血管内皮細胞のCOX-2 mRNAの発現量とが定量的に直線的関係にあり、血管内皮細胞におけるCOX-2の誘導が発熱に主な役割を果たしていることが判明した。
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