細胞癌化にともなうカドヘリン依存性細胞接着機構の異常は、転移浸潤の最初のステップと考えられる。src癌化細胞では細胞接着抑制にともないカドヘリン・カテニン複合体のチロシンリン酸化が起こることを我々は示したが、接着抑制のメカニズムは明らかではない。一方カドヘリン・カテニン複合体は細胞骨格系との結合がその機能発現に必須である。細胞骨格系の制御は低分子量G蛋白質による制御とリン脂質シグナルによる制御が注目されつつある。 1(1)v-H-ras癌化細胞においてカドヘリンの機能を検討したところv-src癌化細胞同様接着性の低下が観察された。この細胞ではチロシンーリン酸化は亢進しておらずv-src癌化細胞における細胞接着性の低下において相関がみられるβ-カテニンのチロシンリン酸化も認めなかった。(2)v-src癌化細胞にdomiinant negative form Ras(17Asn Ras)を発現することにより細胞接着性の回復がみられv-src癌化細胞における細胞接着性の低下にRasの下流シグナルが関与することが示唆された。 2正常細胞およびv-src癌化細胞においてPIP_2結合蛋白質について検討した。Western blotting法では、ともにTritonX-100抽出画分に抗PIP_2抗体によって検出される蛋白質を多く認めたが、v-src癌化細胞において特に結合量の変化を認めなかった。また、PIP_2結合蛋白質であるビンキュリンと相同性をもつα-カテニンとの結合性は認めなかった。 現在Rasの下流シグナルと細胞接着性との関連について検討中である。
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