本研究は、肺胞II型細胞で合成、分泌される肺サーファクタント(脂質-蛋白質複合体)に含まれるC型レクチンSP-Dに着目し、肺胞細胞における機能発現、特にマクロファージを介するSP-Dの生理機能の解明を目的とした。以下に述べる新たな知見を得る成果を上げたが、受容体解析については今後の課題となった。 1.遺伝子組み換えヒトSP-DをCHO細胞を用いて発現した。発現された遺伝子組み換え蛋白質は分子量、抗ヒトSP-Dモノクローナル抗体との反応性においてNative SP-D)と全く相同であった。ヒト肺胞洗浄液からSP-Dを精製することが非常に困難なことから、大量に調製可能な組み換えSP-D発現によって、その構造・機能解析が容易となった。 2.変異導入遺伝子組み換えSP-Dを1と同様にCHO細胞を用いて発現、精製した。変異蛋白質としてはSP-Dの1)コラーゲン領域欠損体、2)ネック領域欠損体、3)N端分子間ジスルフィド結合欠損体、4)CRD領域におけるヒトSP-Aとのキメラ体を調製し、それぞれの構造と検討した。とくに4)において、ヒトSP-Dの糖質結合特異性責任領域からN端へのアミノ酸10残基(Glu310-Pro319)がSP-Dの脂質結合能に関与していることが示唆された。 3.^<35>S標識遺伝子の組み換えSP-Dと肺胞細胞ホモジネートとのリガンド結合実験によい、分子量約14万のSP-D結合蛋白質の存在が明らかとなった。現在この蛋白質の解析に取り組んでいる。
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