申請者は、肝臓における誘導型heme oxygenase(HOx)による酸素ストレス調節機構の解明を行うことを目的として以下の研究を今年度行った。 まず、臓器内におけるHOxの局在を明らかにするために、構成型および誘導型HOxに対する単クローン抗体の作製を行った。ラットの肝からcDNAの単離精製を行った後、恒常的にHOxを発現するトランスフェクタントを樹立した。これらの細胞から採取した蛋白を抗原としてヌードマウスに免疫をおこない、抗体を産生するB-cellを分離した後にハイブリドーマを作製した。これら抗体を産生するハイブリドーマをヌードマウスに腹腔内注射し、一定期間後腹水を回収し抗体を精製した。以上の方法を用いることにより、構成型および誘導型HOxに対する単クローン抗体をそれぞれ樹立した。 肝臓には、通常、構成型および誘導型HOxが発現していることが、生化学的手法および分子生物学的手法により報告されていたが、臓器内のどの細胞種およびどの部位に分布しているかはまったく謎であった。そこでこれら抗体を用いてラット肝組織の染色を行った。通常の肝臓では、構成型HOxは肝実質細胞に、誘導型HOxは、肝常在性マクロファージであるクッパー細胞に発現していることが明らかとなった。 また、内毒素投与、低酸素曝露-再酸素化モデル等を用いて、肝臓における誘導型HOxの発現の変化について検討を行ったところ、肝実質細胞に特異的に、時間依存的に誘導型HOxの発現が上昇することが明らかとなった。 今後、これらモデルを用いて、HOxによる生成物であるビリルビンおよびCOが、それぞれラジカル消去作用および局所血流の維持作用を介して酸素ストレスの防御機構として作用する可能性の実証または否定を、in vivo、およびin vitroモデルを用いて行う予定である。
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