研究概要 |
浸潤性乳管癌(Invasive ductal carcinoma,IDC)内線維化巣(Fibrotic focus,FF)の形成の機序を解明するために、線維芽細胞の増生促進因子であるbasic fibroblast growth factor(bFGF)蛋白とその受容体であるfibroblast growth factor receptor(FGFR)蛋白の発現の状態を腫瘍細胞及びFFを構成する線維芽細胞において免疫組織化学およびWestern blott法を行い検討した。その結果、硬癌においてはFFを持つ症例は、持たない症例に比べ有意に腫瘍細胞におけるbFGF蛋白発現が高く、髄様癌ではそのような傾向がないことが判明した。また、硬癌においては、FGFR蛋白発現を認める症例が髄様癌に比べ有意に多いことも分かった。FFを形成する線維芽細胞におけるFGFR蛋白の発現に関しては、硬癌内のFFを形成する線維芽細胞のほうが、髄様癌内のそれを形成する線維芽細胞よりもFGFR蛋白発現を認めるものが有意に多かった。Western blott法では、免疫組織学的にbFGF蛋白の発現を認めた症例では、18 kDaの分子量の蛋白の発現が確認され、その発現量は免疫組織学的bFGF蛋白の発現の強度と相関していた。FGFR蛋白に関しては、免疫組織学的にFGFR蛋白の発現を認めた症例において、68,71,79 kDaの分子量の蛋白の発現を確認し、その発現量は免疫組織学的検討のそれと相関していた。以上より、腫瘍細胞におけるbFGF蛋白発現とFFを形成する線維芽細胞におけるFGFR蛋白発現がIDC内のFF形成に重要な役割を果たしていると考えられ、両者間におけるパラクリン機構がFFの形成に密接に関与していることが示唆された(投稿中)。
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