消化管運動は消化管筋層内に存在するカハール介在細胞が自発的な活動電位を発生することにより調律されていると考えられており、カハール介在細胞の発達にはStem cell factorーレセプターチロシンキナーゼcーkitシステムが重要な役割を果たしていると考えられている。本研究ではcーkitレセプターの機能喪失性突然変異ラット(Ws/Wsラット)を用いて幽門部におけるcーkit発現カハール介在細胞の数と幽門輪の収縮能、胆汁逆流の関係について調べた。Ws/Wsラットでは正常+/+ラットに比べて極めて少数のc-kit発現カハール介在細胞が幽門部に存在するのみで、幽門収縮も+/+に比べて収縮持続の短い不全収縮パターンを示した。Ws/Wsラットの胃内には+/+ラットに比し多量の胆汁酸が検出されたことからWs/Wsラットではc-kitレセプターの異常によりカハール介在細胞が減少・欠損し、幽門収縮能の低下をきたすため胆汁逆流が起こるものと考えられた。Ws/Wsラットは幽門収縮能と胆汁逆流の関係を検索するのに有用なモデル動物と考えられ、今後さらに詳細に検討する予定である。
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