研究概要 |
炎症反応の局面におけるMCP-1の発現動態、その産生細胞を決定し、好中球浸潤と単核球浸潤との相互関係をしるためにこのプロジェクトを計画し,以下の結果を得た. 1)Con A刺激ウサギ脾細胞のcDNAライブラリーからMCP-1 cDNAをクローニングし、これを発現ベクターに組み込んだ.2)発現ベクターを動物細胞(COS-7 cell)に組み込み、ウサギMCP-1を発現させ,その培養上清からウサギMCP-1を単離、精製した.3)ウサギMCP-1をウサギ膝関節内に投与し,経時的な炎症反応の推移を観察したが,好中球浸潤を伴わない単核球浸潤は誘導できなかった.4)遺伝子組み替えMCP-1を用いて,ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製し,免疫染色およびELISA測定系を開発した.5)ウサギLPS関節炎におけるMCP-1の産生動態は,LPS投与後2-4時間で最高になり,以後その産生量は急速に減少した.これは,好中球浸潤のピーク(9時間)に先行するものであり,その産生細胞は免疫組織化学的に滑膜表層細胞と判明した.6)抗MCP-1抗体の投与による細胞浸潤の変化を観察すると,LPSによる好中球浸潤に影響はなかったものの,単核球浸潤は有意に抑制された. 以上の結果から,MCP-1は炎症の極めて早い時期から産生され,単核球浸潤を誘導していることが明らかとなった.しかし我々の結果から,先行して誘導される好中球から産生される単核球遊走因子が,つづいておこる単核球浸潤を誘導するという従来の仮説は否定的であると思われた.今後は,in vivoにおける他の炎症性サイトカインとのカスケード反応について検討する予定である.
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