HIV-1を構成する蛋白質であるp17分子に注目して研究を進めた。この分子はウイルス粒子内部に位置すると考えられてきたが、これに対する抗体が血液中から消失すると、エイズ発症する症例が多数みられ、HIVを中和する能力をこの抗体が持っているのではないかと想像した。 この研究では、ひと末梢血液中より、p17蛋白をリガンドとしてAffinity-chromato-graphyで精製した抗体の中和能を検討した。HIV-1_<LAI>に対して、精製分取した抗p17抗体を反応させた後、このウイルスをMT-4細胞へと感染を試みる。抗体処理していないウイルスの感染性と比較し、培養上清中に検出できる時期と、産生ウイルス量の2つを指標として、抗体処理によるウイルス感染力の減少程度を評価した。その結果、抗p17抗体でHIV-1を処理すると、このウイルスの感染力は著しく低下し、培養上清へのウイルス産生時期も、産生ウイルス量もともに低下していた。 一方、感染細胞から出芽してくるウイルス粒子にモノクローナル抗体を反応させたところ、ウイルス粒子表面への結合がみられた。 以上の実験事実はHIV-1構成要素のひとつであるp17分子はウイルス粒子表面に一部分を露出させており、これに抗体が結合することにより感染力を低下させることができることを示している。
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