研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)は、構造蛋白として一つのコア蛋白(C)と二つのエンベロープ糖蛋白(E1,E2)を有している。これらの蛋白の高次構造および抗原構造の解析は、HCVの生態や肝炎の病態、防御免疫の解明において重要である。とりわけE2蛋白は、レセプター結合蛋白としてHCVの肝細胞への吸着侵入に主役を果たしていると考えられており、E2蛋白の抗原構造の解析は、HCVの感染防御免疫を解明する上で、またそれに基づいて有効なワクチンを開発する上で極めて重要であると考えられる。そこで、昨年度の科学研究費補助研究(奨励研究A、「新手法を用いたC型肝炎ウイルスのコア蛋白の抗原構造解析」)に引き続き、平成8年度の本研究では、このE2蛋白に焦点を当てた。 本研究の大きな特色は、ランダムなアミノ酸配列を持った大規模なペプチドのライブラリーを用いて、ウイルス蛋白分子の立体構造上のディスコンティニュアスエピトープを解析する点である。そこでまず、ペプチドの多様性が異なる3種類のランダムペプチドライブラリーを化学合成した。次に、遺伝子工学的手法によりE2蛋白を発現しているマウス細胞を作製し、この細胞の破砕物をマウスに免疫することによって、解析のプローブとなる抗E2蛋白単クローン抗体を作製した。現在までに約10クローンの抗体を得たが、詳細な解析にはなるべく多種類の抗体のパネルを持つことが望ましいため、現在さらに多くのクローンを作製中である。また、作製した抗体間でのE2蛋白に対する競合的結合阻止試験により、各抗体が認識しているエピトープのグループ分類を行なっている。また各抗体が認識しているエビトープは、既述のランダムペプチドライブラリーを用いて現在同定中である。
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