研究概要 |
1)TGFβ型受容体セリン・キナーゼの細胞外領域とヒトIgG定常領域のキメラ蛋白を作製・精製し、機能阻害活性を検討した。ALK3(BMP type I受容体)-IgGは、MC3T3-El(骨芽細胞)、PA6(脂肪前駆細胞)のストローマ細胞において、20ng/mlのBMP4によるアルカリ・フォスファターゼ活性誘導を濃度依存性に抑制し、1μg/mlで完全に阻害した。また、東レの須藤博士より供与された、TGFβRII-IgGは、血管内皮細胞において、5ng/mlのTGFβによる細胞外基質蛋白の転写活性誘導を50ng/mlで完全に抑制した。これらのキメラ蛋白は可溶性であり、他のリガンドの作用は阻害せず、生理的なリガンドに特異的に働く。また、モノクローナル抗体作製の際の免疫原としても有効である。 2)多能性幹細胞から細胞外基質蛋白でコートしたシャーレの使用やストローマ細胞株OP9との共培養により、Flk-1陽性の血液細胞、血管内皮前駆細胞を分化誘導する実験系を開発している。BMP4,TGF-βが、この系において、分化誘導の抑制、分化維持の阻害作用があることを見いだした。 3)受容体型セリン・キナーゼの保存されたキナーゼ領域に対するプライマーを合成し、PCR反応を行い、新規の膜貫通型セリン・キナーゼを同定した.TGFβタイプI受容体、アクチビンタイプIB受容体と、細胞内キナーゼ領域で80%以上の相同性を有する新鋭のタイプI受容体セリン・キナーゼ(ALK7)を同定した。ALK7のmRNAは、ラットにおいて脳組織、特に、前脳、基底核、小脳で高い発現が見られた。生理的なリガンドは、不明であるが、その構造上、TGFβファミリーのタイプI受容体として、機能すると考えられる。
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