免疫応答の調節やリンパ組織の形成に関わる分子群を同定することを目的とし、以下の方法を用いてマウスリンパ節CD4^+T細胞における遺伝子発現プロフィルの解析を行った。 【1】3'末端特異的cDNAライブラリの作製と塩基配列の決定 腸管膜リンパ節CD4^+T細胞からmRNAを調整し、Okuboらの方法に準じて3'末端特異的cDNAライブラリを作製した。ここから1186クロンの塩基配列を無作為に決定し、塩基配列の相互比較から、90%以上の相同性を持つクロンを同一と見なし、その出現頻度を解析した。その結果、配列を決定した1186クロンは458種類の遺伝子に分類され、全体の約74%に相当する881クロンは2回以上出現する153の遺伝子に由来し、残りの305クロンは1回の出現のみであることが示された。 【2】CD4^+T細胞における遺伝子発現プロフィルの解析 データベース検索の結果、458の遺伝子は、148の既知遺伝子と310の新規遺伝子であることが明らかになった。また、今回同定した既知遺伝子のなかには、T細胞抗原受容体(TCR)、細胞接着分子およびレセプター型チロシンキナーゼなどの機能分子が認められた。得られた遺伝子発現プロフィルと肝臓、腎臓などを含む22の他組織の解析結果を比較し、CD4^+T細胞ライブラリにのみ発現が検出されたものをリストアップした。このうち、今回の解析過程で2回以上出現する遺伝子は28種類認められ、そのうち6種類はTCRや造血系に特異的なチロシンフォスファターゼなどの既知遺伝子であり、他の22種類は新規遺伝子であった。現在、新規分子の発現を精査するとともに、その構造の決定を試みている。
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