C57BL/6 bm/bmマウスは第19染色体の単一遺伝子座の変異に由来する自然変異マウスで、ヒトachondrogenesis type IBの動物モデルと考えられている。このマウスは活性硫酸(PAPS)合成酵素の活性低下による硫酸化糖の合成異常をきたし、その結果骨形成不全による四肢の短肢を呈することが報告されている。私たちは免疫系における硫酸化糖の機能を明らかにすることを目的とし、bm/bmマウスの免疫系の解析を行った。 各リンパ組織におけるリンパ球サブセットを検討した結果、このマウスにおいてバイエル板でT細胞が60〜70%、B細胞が30〜40%と、野生型マウスと比較してT細胞とB細胞の比率が逆転していることを見いだした。in vivoホ-ミング実験の結果、bm/bmマウスでは野生型とは異なるホ-ミングパターンを示し、パイエル板へのT細胞のホ-ミングが増加していることを見いだした。さらに、パイエル板では、硫酸化糖に付加する硫酸基のソースとなるPAPSの合成が野生型の1/10以下であり、他の臓器に比較してその活性が著しく低下していることを見いだした。bm/bmマウスのパイエル板ではT細胞の分裂増殖の促進は認められないこと、リンパ球のリンパ節へのホ-ミングには硫酸化糖が重要な役割を果たすことから、bm/bmマウスの硫酸化糖の生合成異常がパイエル板へのリンパ球ホ-ミングに影響を与えている可能性が強く示唆された。 ^<35>S-sulfateの取り込みによって、末梢リンパ節、パイエル板、骨髄、脾臓における硫酸化糖の合成を野生型マウスとbm/bmマウスで比較した結果、bm/bmマウスのパイエル板および骨髄においてある種の硫酸化糖タンパク質の合成異常が認められた。現在bm/bmマウスで合成異常が認められる硫酸化糖がパイエル板へのT細胞のホ-ミングに関与しているかどうか、検討を進めている。
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