1、動物の飼育・繁殖 京都大学胸部疾患研究所から分与を受けた、老化促進モデルマウスSAMP8系(老年性痴呆モデル)と対照として正常老化を示すSAMR1系を、コンベンショナル動物飼育室にて、市販固形飼料及び水道水を与えて繁殖・飼育した。現在SAMR1系は第2〜12世代まで約650匹、SAMP8は系第2〜11世代まで約300匹を飼育中である。 2、老化兆候の観察 平成8年12月までに死亡したマウスの平均寿命は、SAMR1系では476.3±224.8日であるが、SAMP8系では422.3±176.0日であり、SAMP8系の方がやや寿命が短い傾向にあった。4ヶ月毎に体重や老化度評点を記録した結果、各月齢においてSAMP8系の方がSAMR1系よりも高い老化度評点を示し、SAMP8系の方がより早期に老化が進んでいると考えられた。 3、学習記憶障害の判定 step-through実験装置を用いて、SAMR1及びSAMP8系の受動回避反応を見たところ、10ヶ月齢のSAMP8系では学習記憶障害の兆候が見られた。 4、ミネラルの測定 SAMP8系と比較検討するために、同じ固形飼料にて飼育された、SAMP1系及びSAMR1系マウスの組織中ミネラル濃度を測定した。両系ともに脳の銅濃度や腎のカルシウム濃度が加齢に伴い上昇することが示された。また、雌のSAMR1系では、肝臓に含まれる多くのミネラル濃度が加齢に伴い減少することを発見した。 5、遺伝学的検査 分与後10世代を経たので、老化アミロイドーシスを中心としたSAMの遺伝的形質が維持されているかを確かめるために、19項目の遺伝学的検査を行った。SAMR1、SAMP8系ともに検査項目については、特に異常はなく、形質は維持されていると考えられた。
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