昨年の調査時には、介護者107名のうち、52名が介入を受けることに賛成していたので、介入のデザインがクロスオーバーデザインであること、あよび具体的な介入内容(福祉専攻の学生による訪問、介護者の集い)を説明し、希望者を確認したところ、32名であった。しかも、全員がクロスオーバーデザインに対しては、反対であった。そこで、この32名を対象としたが、4か月間で実際に訪問の希望があったのは、のべ8回(4人1回、2人2回)であり、これらの介護者にはすべて訪問を行った。今回は、介護者の反対が強く、対照群を設けることができず、また対象数が少数であったので、仮説の検証が可能ではなかった。そこで、実際の利用者が少なかった原因を検討するために、介入期間終了後、希望がなかった18名を対象に、介護者の自宅でinterviewを受けることを依頼した。このうち快諾してくれた7名に対し、in-depth interviewを行い、その上で被介護者の神経・身体的症状を検討した。semi-structered interviewを行い、内容を録音した上で、書きおこし、これをもとにcontent analysisを行った。この事例検討の結果は、Psychiatry and Clinical Neuroscienceに投稿中であるが、1)被介護者の障害の程度にも拘わらず、介入の必要性を確認していない事例(被介護者の褥瘡、あるいは徘徊などの問題行動)、または、2)介入を希望しても、自分以外の者が介護に携わることへの不安感、罪の意識(feeling of guilty)が強いことが明らかになった。この知見をもとに、今後はサンプル数を増やした上で、STAIなどの尺度を用いて、介護者の介入に対する心理的不安感を検討することが必要であろう。さらに地域レベルにおいて、対照群を設けた研究を行えるようにすることを今後の課題とするものである。
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