研究概要 |
寝たきりの発生原因の一つと考えられてきた「閉じこもり症候群」に焦点をあて、在宅高齢者の閉じこもりの実態と身体・社会・心理的特徴を把握するため、山形市在住の60歳以上の弾性147名、女性153名を対象に閉じこもりに関する個別訪問調査を1997年に実施した。うち、調査完了者234人を分析対象となった。総合的移動能力尺度を用いて、屋内にとどまっている者を閉じこもり群、日常生活の行動範囲が屋外に及ぶ者を非閉じこもり群と操作的に定義した。閉じこもりの関連要因として、身体的特徴は日常生活動作(ADLと略す)、高血圧の既往歴などを、社会的特徴は日常生活行動、家族・近隣関係、老研式活動能力指標を取り上げた。心理的特徴は心理的依存症、生きがい、主観的健康感などを取り上げた。基本属性は年齢、性別、最終学歴、配偶者の有無とした。 その結果、閉じこもり群は12名(5.1%),非閉じこもり群は222名(94.9%)であることがわかった。年齢で2群間に有意な差が見られた。年齢が高くなるほど、活動性が低下して家に閉じこもりがちになることが示された。また、閉じこもりの関連要因として、身体的特徴では、ADLの歩行・小便・入浴・着脱衣で介助の必要な人が閉じこもり群に多かった。社会的特徴では炊事・洗濯・掃除、家・庭の手入れ、孫・配偶者の世話、新聞雑誌を読む、テレビの視聴、趣味・稽古ごとの日常生活行動と老研式活動能力指標で閉じこもりと有意な関連が認められた。社会的な側面から見ても、知的な活動や、社会で独立した生活を送るための能力が低い人が閉じこもり群に多いことが示された。また、閉じこもりと有意な関連があった心理的特徴は、生きがいがないことと主観的健康感でも健康でないと評価した者に閉じこもりが多かった。 以上より、閉じこもりは高齢になるほど多くみられ、身体的ADLや主観的健康感、日常の生活行動など身体・社会的特徴のみならず、生きがいや主観的健康感という心理的特徴との関連もあることがわかった。
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