本研究の目的は、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下H.pylori)の疫学調査を行うために、簡便で安価な精度の高い血清診断法を開発すること、将来的には集団健診の場においてH.pyloriのスクリーニング検査を行うことである。そこで血清診断法の開発の基礎的研究として、標準抗原タンパクの抽出を行い、モノクローナル抗体の作製を行った。 まず胃炎、胃・十二指腸潰瘍などの内視鏡検査から得られた生検組織から、H.pyloriを分離・培養した。これらの菌株のウレアーゼ(urease)活性、空胞化毒素の値はまちまちであった。得られたH.pyloriを増殖させ、菌体および培養液中の菌体外成分のそれぞれからタンパクを抽出した。その結果標準抗原としてウレアーゼに注目し、菌体から精製したウレアーゼを基にアジュバンドをつくり、balb/cマウスの皮下に投与して抗H.pylori-ureaseマウスモノクローナル抗体を作成した。その際効率よく大量に抗体を得るために、マウス由来の抗体産生細胞とガン細胞を細胞融合させた。そのようにして得られた抗体をさらに分離・精製するために、さらにスクリーニング・クローニングを行い、最終的なH.pylori-ureaseマウスモノクローナル抗体とした。 今後は今回精製したH.pylori-ureaseを固相抗原としてH.pylori感染血清と非感染血清での抗体価を測定し、より感度・特異性の高い抗体測定系の構築に努める予定である。
|