血小板活性化因子(PAF)は好酸球に対して強力な活性化作用を持ち、アレルギー性炎症における重要なメディエーターとして考えられている。本研究では、アレルギー性炎症における好酸球のPAF受容体の発現調節について一連の検討を行ない、以下の知見が得られた。1)健常人とアトピー性気管支喘息患者から得た末梢血好酸球についてPAF受容体発現量を比較したところ、患者好酸球では、健常人に比べ有意に増加していることが明らかとなった。さらに、RT-PCRを用いたPAF受容体mRNAの比較定量法を確立し、同様の比較をしたところ、mRNA量も患者好酸球で有意に増加していた。2)好酸球におけるPAF受容体の発現がどの様なメカニズムで調節されているかについて明らかにするため、IL-3、IL-5、GM-CSFの健常人末梢血好酸球におけるPAF受容体発現量への影響について検討したところ、いずれのサイトカインの暴露よってもPAF受容体発現量の増加が認められた。患者好酸球では、IL-3、GM-CSFによりPAF受容体数の増加が認められたものの、IL-5ではもはや増加しなかったことから、アトピー性気管支喘息患者では末梢血中で好酸球がすでにIL-5に暴露されており、この結果PAF受容体が増加している可能性が強く示唆された。3)IL-5によるPAF受容体発現増加作用について詳細に検討したところ、その増加はIL-5処理6時間から見られ、12〜18時間でプラトーに達すること、0.5〜5ng/mlという低い濃度でその作用が見られることが明らかとなった。さらに、IL-5によりPAF受容体mRNA量も増加し、その際mRNAの安定性には変化が見られなかったことから、IL-5によるPAF受容体の発現増加作用は転写促進を介して起こることが示唆された。4)IL-5により好酸球のPAFに対する細胞内カルシウム応答も増大したこのことから、受容体発現量の増加を介して好酸球のPAFに対する応答性が増大することを確認した。
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