病態を引き起こしている病因物質が発現、生産される過程を選択的かつ特異的に制御して発現を抑えることにより病状を寛解することがと推測されるアンチセンス療法について検討を行った。当初、炎症反応に関与する多様な遺伝子の活性化を制御する転写因子NF-κBの発現を制御することを目的としていたが、NF-κBに関してはPTX、サリチル酸、等の比較的特異的にNF-κBの活性化を抑える薬物がすでに存在しているので、今回はヒトTh1型T細胞に特異的に発現しており、Th1型T細胞のサイトカイン産生に関わっていると予想される細胞内情報伝達に関与しているチロシンキナーゼTxkのアンチセンスDNAによる抑制効果を検討した。ヒト末梢血単核細胞を抗原で刺激しT細胞クローンを樹立した。樹立したT細胞クローンは、INF-γとIL-4の産生性をELISA法で測定しサイトカイン産生パターンからTh0、Th1、Th2型T細胞に分類した。これらのT細胞クローンのTxkmRNAの発現をRT-PCR法で検討しTh1型T細胞で特異的にTxk mRNAが発現していることを確認した。Th1型細胞クローンにTxk遺伝子の翻訳開始点と相補的な配列を持つ20merのホスホロチオエ-ト型アンチセンスDNAを添加し24時間後、抗原で刺激し、さらに24時間後のINF-γの産生量をELISA法で測定したところ、アンチセンスDNAの添加によりTh1型T細胞が産生するINF-gの産生を完全に抑制した。アンチセンスDNA添加後48時間のbeta-actinのmRNA産生量には変化を与えなかった。TxkアンチセンスDNAは、細胞毒性でない機序でTh1型T細胞からのINF-γ産生を抑制したものと考えられる。
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