研究概要 |
1)ICAM-1、VCAM-1を介する炎症性サイトカイン(IL-1,6,8,TNFα)の発現誘導の検討 a)RA患者滑膜細胞、RA由来滑膜細胞株E11より無刺激状態においてIL-1,6,TNFαの発現が認められた。 b)RA患者滑膜細胞およびE11上には無刺激状態でICAM-1分子の発現が認められた。IFN-γ添加にてICAM-1の発現は増強し、VCAM-1の発現が新たに誘導された。 c)RA患者滑膜細胞およびE11をホルマリン固定したTリンパ球(PMAにてインテグリンを活性化した後固定)と混合培養、あるいは滑膜細胞上のICAM-1,VCAM-1分子を抗ICAM-1抗体、抗VCAM-1抗体にてクロスリンクすることによりIL-1,6,TNFαの発現が増強した。 2)接着分子を介する刺激により活性化される核内因子の検索 AP-1、NFkB、CREB、NFIL-6など既にいくつかの炎症性サイトカインの遺伝子発現に重要な核内因子の結合モチーフをタンデムに数個もつCATベクターをトランスフェクションし、ICAM-1分子を抗体にてクロスリンク刺激した時のCAT活性を検討したところ、AP-1結合部位を含むもののみ有意なCAT活性増強が認められた. 3)接着分子を介する刺激に反応するIL-1βの遺伝子調節領域の同定 a)E11において、ICAM-1分子を介する刺激に応答するIL-1β遺伝子調節領域は、転写開始部位より約3000bp上流に存在する約400bpの領域であった。この領域に存在するAP-1結合部位がIL-1β刺激時のIL-1β転写誘導に重要な働きをしていることが明らかとなった. b)ICAM-1刺激に応答するIL-1β遺伝子調節領域のDNAをプローベとしてバンドシフトアッセイを行ったところ、刺激によりAP-1蛋白が活性化されプローベに結合することを確認した. 以上より慢性関節リウマチ滑膜細胞においては、サイトカインなどの可溶性分子による刺激に加えて、周囲の細胞との接着を介して炎症性サイトカイン遺伝子の発現調節が行われており、炎症の持続遷延に関与している事が示唆された。
|