我々の樹立したC型肝炎ウイルス(HCV)core抗原特異的細胞障害性T細胞株を用いて、C型肝炎ウイルスの88より96のアミノ酸のエピトープで肝炎ウイルス側の変異がいかに細胞性免疫に影響を及ぼしていくかを検討したところ、ウイルスが94位アミノ酸であるアラニンがスレオニンに変化する突然変異により細胞障害性T細胞株からの認識を弱いアゴニストとなることで逃れていることが明らかとなった。さらにこの変異による弱いTCRアンタゴニズムも認められた。 本年度はさらにmulticlonalと思われる患者末梢血内T細胞全体にどのように影響を与えうるかを検討したところ、同様な弱いアゴニスト、弱いTCRアンタゴニズム作用が患者末梢血内T細胞ラインでも認められ、クローンのみで認められる特殊な現象ではなく、より普遍的に宿主対ウイルスの関係の中で働きうる事象であると考えられた。実際この患者末梢血内T細胞ラインを限界希釈法でcloningしてこの弱いアゴニスト、弱いTCRアンタゴニズム作用がどのくらいのpopulationで認められるか検討したところ、この患者では88%のT細胞株がTCRantagonismを示し、先のT細胞ラインにおけるアゴニズム、TCRアンタゴニズムの結果を裏付けた。 さらに現在患者末梢血におけるT細胞ライン誘導におけるTCRアンタゴニズムの影響を予備的実験において検討したところ、今までのいわゆるeffector phaseのみならず、induction phaseでもTCRアンタゴニズムが効果的に働きうる可能性が示唆されている。
|