本年度の研究では、まず、マウスTNB免疫大腸炎の作製に着手した。TNB-BSAをCFAとともに計2回皮下免疫した後、TNB10mgをエタノールとともに注腸することにより、ほぼ全例のマウスで下痢と全身消耗を惹起可能であり、過半数のマウス(57%)が数日で死亡した。注腸2週間後の剖検では、大腸組織にはヒトクローン病に類似する、全層にわたる著明な炎症性細胞浸潤とびらんの形成を非連続的に認めた。酵素抗体法にて浸潤リンパ球の表面抗原を検討すると、CD4陽性細胞が優位であった。さらに、大腸炎マウスにおいては、IFN-γ、TNF-αのmRNAが発現されていることが、RT-PCR法にて確認された。次に、これらのマウスにおいて、CD4 analogueならびに抗CD4抗体を投与し、その炎症抑制効果を検討した。CD4 analogue投与群では、下痢と全身消耗はほとんどのマウスで軽減し、死亡率も10%以下であった。摘出大腸標本の検討でも、炎症所見は非常に軽微であり、また、IFN-γ、TNF-αのmRNAの発現も消失していた。抗CD4抗体投与群でも、同様の傾向は認められたが、死亡率は約30%であった。対象として、scramble peptide(CD4 analogueとアミノ酸構成は同一だが、配列がランダムなもの)およびラット抗マウスコントロール抗体を投与した群も検討したが、治療効果は認められなかった。現在、大腸粘膜内CD4陽性細胞のサブセットを検討中であるが、両治療群に於て、CD45RB、CD44などnative cellとmemory cellを区別する表面抗原の発現の相違が確認されつつあり、CD4 analoguは抗CD抗体とは違った機序により炎症抑制効果を発揮していると考えられる。
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