原発性胆汁性肝硬変、慢性ウイルス性肝炎症例の末梢血リンパ球のFas抗原依存性アポトーシスに、胆汁酸が及ぼす影響について検討し、以下に述べる新たな知見が得られた。尚、検討には経過観察中に採血が必要と思われた際に得た血清の一部を用いたが、その際に採取した検体の一部を本検討に用いることを患者に説明し承諾を得た。 1胆汁酸が慢性ウイルス性肝炎の末梢血リンパ球のFas抗原依存性アポトーシスに及ぼす影響 慢性ウイルス性肝炎症例の末梢血リンパ球の、in vitroにおける抗Fas抗体添加によるアポトーシス誘導実験に胆汁酸を添加すると、胆汁酸は濃度依存性に抗Fas抗体、Fas抗原依存性アポトーシスを抑制することが明らかとなった。この傾向は慢性B型、C型肝炎いずれにおいても認められ、両群間で差異は認めなかった。慢性C型肝炎では、血清ALT値が高い症例では低い症例に比し胆汁酸によるリンパ球のアポトーシス抑制が著明であることが示された。 2胆汁酸が原発性胆汁性肝硬変の末梢血リンパ球のFas抗原依存性アポトーシスに及ぼす影響 慢性ウイルス性肝炎で施行したのと同様の検討を原発性胆汁性肝硬変症例を用いて検討しているが、現在のところ胆汁酸による有意な抗Fas抗体、Fas抗原依存性リンパ球アポトーシス誘導抑制は認めていない。この原因がいかなる機序によるものか明らかにするため、現在、リンパ球活性化によるFas抗原発現への胆汁酸の影響に、慢性ウイルス性肝炎と原発性胆汁性肝硬変で差異があるか検討中である。
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