原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝硬変において、肝内浸潤T細胞が特定のT細胞レセプター(TCR)Vβ鎖を優先的に使用しているか、それらが病態により異なるか検討し、以下の新たな知見が得られた。尚、検討には診断のために施行した肝生検組織および経過観察中に採血が必要と思われた際に得た血清の一部を用いたが、その際に採取した検体の一部を本検討に用いることを患者に説明し承諾を得た。 1原発性胆汁性肝硬変の肝組織中で使用されているTCRVβ鎖の検討 肝内浸潤および末梢血T細胞が高頻度に使用しているTCRVβ鎖はそれぞれ異なるが、各症例に共通して肝内浸潤T細胞が使用している疾患特異的なTCRVβ鎖が認められなかった。しかし、肝内浸潤T細胞は末梢血T細胞に比し使用しているTCRVβ鎖の数が限定している傾向が認められた。 2自己免疫性肝炎の肝組織中で優先的に使用されているTCRVβ鎖の病態による変化の検討 肝内浸潤T細胞が末梢血T細胞に比して有意に高頻度に使用しているTCRVβ鎖は、治療前、ステロイド治療後では異なり、それぞれのCDR3領域のシークエンスを行うとクロナリテイーを有していることが示された。興味深いことに、治療前に肝内で有意に使用されているTCRVβ鎖の末梢血における使用頻度は低く、逆に治療後にはそのクローンの末梢血における使用頻度が増加し、肝内の使用頻度は低下する傾向が認められた。
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