研究概要 |
急性膵炎、特に重症急性膵炎の予後は、今日の内科集中治療の普及により改善されつつある。しかし、急性膵炎の重症化機序には不明な点が少なくなく、重症化の予防は重要である。 今回、新しく開発された蛋白分解酵素阻害剤ONO 3403のラット closed duodenal loop (CDL)膵炎に対する投与効果を検討した。 【対象および方法】 Wistar系雄性ラット(体重250g前後)を用いCDLの長さを1cmとし、胆汁を肛門部からCDLの肛門側の十二指腸にbypassしたCDL膵炎を作成し、1)生食投与(NS)群、2)FOY 305 100mg/kg投与(FOY)群、3)ONO 3403 30mg/kg投与(ONO-30)群、4)ONO 3403 100mg/kg投与(ONO-100)群の4群に分けた。各群n=12とした。各薬剤はCDL作成時にCDLの肛門側より経十二指腸投与した。CDLは6時間後に解除し、さらに6時間後(CDL作成12時間後)まで観察した。 【結果】 1)血清膵酵素値は膵炎発症後6,12時間で、ONO 3403投与群ではNS群に比べ有意の用量依存性の抑制が認められた。 2)膵湿重量はNS群に比べONO 3403投与群で有意に低値であった。 3)12時間後の膵組織像では、NS群では著明な浮腫と軽度の出血、腺房細胞壊死がみられたが、ONO-100群では浮腫は著明に抑制され、出血、壊死も軽減させた。 4)Cu/Zn SOD免疫組織化学染色では、NS群において、腺房細胞および導管上皮細胞におけるCu/Zn SOD陽性細胞数は正常ラットに比べ著明に減少したが、ONO-100群では減少の程度が比較的軽度であった。 【結論】 ラットCDL膵炎における ONO 3403の投与効果は用量依存性に認められ、その効果はFOY 305より強力であることが示された。今後本剤に対する更なる検討が必要であるが、臨床応用が十分に期待できる薬剤であると考えられた。
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