ラットに一定量のLipopolysaccharideを投与して作成した急性肝障害モデルに、臓器障害性を働くと考えられる一酸化窒素(NO)の合成酵素をアンチセンスDNAなどを投与してNO産生を抑制することで臓器障害の軽減を試みた。 1.ラットに一定量の四塩化炭素を投与すると一定時間後に血中の肝逸脱酵素は上昇し、急性肝障害を呈することが確認された。 2.急性肝障害を起こしたラット腹水の好中球や細菌学的研削により特発性細菌性腹膜炎(SBP)を発症したものを選別し、実験に供した。肝などの諸臓器からmRNAを抽出し、各種NOsynthase(NOS)cDNAをプローブとして用いてノザンブロット法を施行したところinduciableNOS(iNOS)mRNAの増加が遺伝子レベルで確認された。さらに蛋白質を抽出し、iNOSに対するモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロット法にて蛋白質レベルでの発現を検討したところiNOSの増加が確認され、SBPにおけるiNOSの関与が示唆された。 3.iNOSに特異的と考えられるcDNA断片を設計し、アンチセンスDNAを作成した。これをSBP発症ラットの腹腔内に投与し、一定時間後に肝よりmRNAや蛋白質を抽出し、ノザンブロット法やウェスタンブロット法でiNOSの発現抑制を検討したところ、一過性にiNOSの低下が観察された。 4.肝細胞障害の程度を肝逸脱酵素の測定と組織化学的に評価し、生存率も検討した。SBP発症群とコントロール群との間にはさほど差異が認められず、アンチセンスDNAの投与量や投与法は更に検討が必要であると考えられた。 上記の結果より、SBP発症ラットの組織障害にiNOSが関与していることが明らかにされ、これを制御することで組織障害を軽減させる可能性が示唆された。
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