研究概要 |
ヒト自己肺腺癌に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導を試み以下の結果を得た。 1.ヒト自己肺腺癌に対するCTLの誘導 肺癌手術検体より樹立した肺腺癌細胞5株と同一患者の抹消血単核球を混合培養し、CTLの誘導を試みた。培養条件はAIMV培地にIL-1、IL-2、IL-4、IL-6を加え、週毎に癌細胞と混合培養を行った。その結果、4株に長期培養可能なCTLの誘導に成功した。 2.癌細胞におけるMHC class I,II発現とCTL表面マーカー 癌細胞はすべてclass I抗原を発現していたが、class II抗原は1株のみ発現していた。CTLの3株はCD4-CD8+で、1株はCD4+CD8-であった。CD4+CTLはMHC class IIを発現している癌細胞から誘導された。 3.CTLの自己肺腺癌細胞および他の肺癌細胞の対する細胞傷害活性 CD8+CTLはE/T比が5/1、6時間接触で50%前後、24時間接触で80%以上の極めて強い細胞傷害活性を示した。一方CD4+CTLは細胞傷害活性が弱く、24時間接触でも50%以下の傷害活性を示した。すべてのCTLは自己肺癌細胞に特異的に傷害活性を示した。 4.各種抗体によるCTLの細胞傷害活性の抑制効果 CD8+CTLは、CD3、CD8、MHC class Iに対する抗体で細胞傷害活性が抑制された。一方CD4+CTLはCD3、CD4、MHC class IIに対する抗体で抑制された。 まとめ IL-1、IL-2、IL-4、IL-6を加えることによりより効率良く autologous CTLの誘導に成功した。これらのCTLは自己肺癌細胞を特異的に認識し、傷害活性を示した。これらのCTLを用いることにより、肺癌における免疫機構の解明ばかりでなく免疫療法の開発につながると思われる。
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