今回我々は急性肺損傷の発症病態における単核球系食細胞、とくに細網内皮系の役割を検討することを目的とした。具体的には、細網内皮系を活性化するとされるCorynebacterium parvum加熱死菌(CP)の腹腔内投与により前処置したモルモットを用い、エンドトキシンの気管内投与による急性肺損傷を評価した。またサイクロホスファミドにより末梢血好中球を減少させた動物や、三塩化ガドリニウムにより単核食細胞の機能を抑制した動物でも肺損傷を検討した。エンドトキシン投与4時間後に屠殺し、肺を摘出した。肺損傷の指標としては肺湿乾重量比および放射性ヨードで標識したアルブミンの肺血管外への漏出を用いた。結果としてCPで前処置したモルモットでは通常肺損傷を起こさない少量のエンドトキシンで急性肺損傷が発生した。また脾重量の増加、血漿中の腫瘍壊死因子(TNF)活性の上昇を認め、細網内皮系をはじめとする単核球系食細胞の関与が示唆された。サイクロフォスファミドにより末梢血好中球を減少させた群では対照群と比較して肺損傷の程度に差を認めなかった。また肺組織中への好中球の集積もほとんど見られず、単核球系食細胞自体が肺組織傷害を引き起こしている可能性も考えられた。また三塩化カドリニウムにより単核球系食細胞の機能を抑制した群(単核食細胞抑制群)では、対照群に比して肺損傷が減弱し、気管支肺細胞洗浄液中への好中球の集積も軽度であった。単核食細胞抑制群では肺組織中の単核食細胞数の減少を認めた。感染などの基礎疾患を有する個体では細網内皮系などの単核球系食細胞の活性化が起こり、これが急性肺損傷の発症に関与していることが示唆された。またこうした個体では健常な個体に比べて、急性肺損傷の発症に対する末梢血好中球の関与が少ないことが示された。
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