1)免疫治療評価系としてのSCID-huマウスの作製 我々はSCIDマウスにヒト骨片移植と強力な増殖因子投与を組み合わせることによって、約一年間ヒト造血系が再現できることを確認した。しかしこの系では再現されたヒト由来細胞の分化は認められず、現時点では免疫治療モデルとして用いることができないことも明らかとなった。そこで、既に分化している末梢血単核球移植SCID-huマウスの免疫治療評価系へ応用への可能性を検討した。しかし、このモデルでも局所治療効果の評価は可能であったが、全身治療系としての評価は不可能であった。その原因として分化したヒト細胞は、移植翌日には末梢血、脾臓、肝臓、肺などのマウス臓器内から消失することが示唆された。以上の結果より、免疫治療評価系としてのSCID-huモデル確立のためには分化ヒト免疫担当細胞を維持する新たな方法の開発が必要であると考えられた。 2)マウスモデルを用いた免疫遺伝子治療の評価 ヒトIL-2産生アデノウイルスベクターを用いてマウス肺癌細胞3LLにIL-2遺伝子を導入し、既存の3LL腫瘍に対する治療効果並びにワクチン効果を検討した。その結果、遺伝子導入細胞の胸腔内、腹腔内、皮下接種いづれにおいてもワクチン効果は見られるものの、既存の腫瘍に対する治療効果としては、胸腔内腫瘍に対する胸腔内ワクチン接種、腹腔内接種に関する腹腔内ワクチン接種等の局所効果しか認められないことが明らかとなった。以上の結果は、IL-2遺伝子導入癌細胞を用いた免疫遺伝子治療は既存の腫瘍に関する効果が限定されていることを示唆しており、既存腫瘍に対し効果のある治療法の開発が必要と考えられた。我々は、現在その方法として腫瘍抑制遺伝子を用いた遺伝子治療と化学療法などとの併用療法の検討を行っている。
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