アルツハイマー病脳ではHO-1発現が異常に増大していることが知られており、パーキンソン病の原因遺伝子候補であるCYP2D6遺伝子はHO-1遺伝子(22q12)のすぐ近くにマップされるなど、HO-1遺伝子とヒト神経変性疾患との関連を示唆するデータが蓄積されてきた。しかしながら、これまでHO-1遺伝子には適当なマーカーがなく十分な解析がなされてこなかった。我々はヒトHO-1遺伝子内にマイクロサテライトマーカーを見いだし、当該年度はその解析を中心に研究を進めた。HO-1遺伝子´5上流のプロモーター領域にpoly GTがあることは以前から知られていたが、正常人200〜300人の解析から、我々はこのpoly GTが非常に多型性に富んでいることを発見した。正常人での分布はGT repeat数、22と27に二峰性のピークを示し、allele数は23であった。このGT repeatはHO-1遺伝子プロモーター上の2つのcis-elements、HSE(heat shock element)とMTE(macrophage-specific TPA responsive element)の間にあり、プロモーター機能に直接影響する可能性がある。また遺伝子上の何らかの変異と連鎖している可能性もあるため、特にアルツハイマー病患者とパーキンソン病患者それぞれ約100例についてこのGT repeatの分布を調べたが有意の関連は認められなかった。現在共同研究により、この変異がプロモーター機能に影響するかどうか、レポーター遺伝子を構築して解析をすすめている。 またヘム異化系の最終産物であるbiopyrrinsがELISA法により高感度で定量できるようになったためヘム異化系の機能を全体として評価できるようになった。現在、MPTP投与モデルなどの動物モデルを用いて神経変性時のbiopyrrinsの変動を評価中である。
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