ビデオ強化型顕微鏡により培養血管内皮細胞膜辺縁部にみられた波動様運動"ruffling"について報告する。 培養細胞は、ラットの脳血管内皮細胞(RBEC)およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた。内皮細胞をカバーグラス上に培養し、スライドグラス正方形窓の後部よりカバーグラスを内皮細胞が底になるように貼りつけ、DMEM(Dulbecco's modified Eagle's media)にて持続灌流した。超微細構造の連続観察には、微分干渉顕微鏡およびCCDカメラ-画像解析装置-ビデオシステムからなるビデオ強化型顕微鏡を用いた。50%希釈DMEMまたは蒸留水の低張液を灌流、また多核白血球はヒト静脈血より分画採取し、そのサスペンジョンを灌流することにより白血球-内皮細胞の相互作用を起こさせ、その際の変化を超微細観察した。また窒素飽和液灌流により、細胞を低酸素状態下におき観察した。内皮細胞の変化をビデオに録画し、play-backしつつ画像解析装置(Excel、日本アビオニクス)により解析した。 内皮細胞は培養2-5日後にカバーグラス上に平坦に密着し、約1週間で敷石状に配列した。波動様運動"ruffling"は、HUVECあるいはRBECともに、低張液の灌流初期あるいは多核白血球の接着初期において多発した。また、ときにコントロール時にも観察された。それは細胞膜辺縁部のうねりを伴う波動様運動であり、捲れ上がった先端部が細胞膜の他の部位に融合するような現象も認められた。細胞膜の捲れたロールの直径は0.4-0.8μm、その全長は5-15μmであった。低酸素状態としたHUVECでは、細胞間が緩徐に解離し、いわゆるdiaphragmed fenestraeに移行した。培養血管内皮細胞の膜辺縁部波動様運動"ruffling"は細胞間結合部解離過程の一部分現象で、血液から組織への物質移動調節に関連するものと思われた。
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