研究概要 |
心筋の虚血・再潅流障害には、細胞内Caオーバーロードが重要な役割を担うことが知られているが、そのメカニズムは明らかにされていない。我々は、再潅流時に、Ca依存性に心筋内の構造蛋白が変化し、この変化はプロテアーゼ阻害剤で抑制されることから、再潅流障害にCa依存性プロテアーゼ(calpain)が関与する可能性を示してきた。しかし、心筋細胞内Caオーバーロード時に、calpain活性が亢進するかは確認されていない。そこで本年度は、細胞内Ca濃度とcalpain活性を同時に計測する系を確立し、心筋細胞内でのcalpain活性動態を調べた。 成熟モルモットの心臓から、心筋細胞を単離し、細胞内Ca濃度をfura redにより、calpain活性を7-amino-4-chloromethylcoumarin,t-BOC-L-methinine amide (Boc-Leu-Met-CMAC)(calpainで分解され7-amino-4-methylcoumarinとなると蛍光を発する)により計測した。この2種類の蛍光物質を細胞内に取り込ませ、360nm、420nmの2波長で励起し、fura redと7-amino-4-methylcoumarinの蛍光を分離し、顕微測光法にて測定した。細胞内Ca濃度は、細胞外のNaClをcholine Clで置換した液で潅流することにより上昇させた。 Na freeで潅流してしばらくして細胞内Ca濃度が上昇し始め、123±43(mean±SEM)秒遅れてcalpain基質の蛍光が増加することが確認された。この時点で細胞形状はやや短縮しているが、完全なsquareとなるのは、calpainの活性化が起こった後であり、蛍光色素の流出(細胞膜の変化を示す)は、細胞内Ca濃度上昇開始498±170秒後に起こり始めた。 以上から、心筋細胞内では、わずかな細胞内Ca濃度の上昇に伴ってcalpain活性が亢進すること、細胞形状の変化は、calpainの活性化後に起こることが確認された。
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