実験計画当初はヒトthrombospondin(TSP)1を用いて、in vitro用発現ベクターとしてpCB6(+)またはLXSNに、またin vivo用実験としてpXCJL-2アデノウイルスベクターにCMVプロモーターとともに組み込む予定であったが、いずれも組み替え実験に成功しなかった。しかし、同時にマウスTSP1およびTSP2のcDNAを既報に基づきクローニングに成功したため、ヒトTSP1を用いることは断念し、マウスTSP1およびTSP2について発現ベクターの作製を試みた。その結果、マウスTSP1をpBK CMVおよびLXSNに、マウスTSP2をpcDNA3およびLXSNに組み込むことに成功した。現在in vitroで血管平滑筋細胞(A10)あるいは内皮細胞(HUVEC)においてTSP1および2の機能を検討中で、予備実験ではTSP1は血管平滑筋細胞の増殖を促進し、内皮細胞の増殖を抑制するようである。In vivoの遺伝子導入実験についてはhydrogel polymerを用いた導入法を確立したので、今後計画を進めていく予定である。In vivoの予備実験として、ウサギ頚動脈のバルーン傷害血管において、組織学的に平滑筋細胞に富んだ内膜肥厚を認め、同部のヒトTSP1抗体を用いた免疫染色では、内皮細胞および細胞成分の密な管空側に近い平滑筋細胞にTSP1の濃染を認めたが、肥厚部分の比較的細胞の疎な部位には、TSP1の発現はほとんど認められなかった。また、傷害血管より抽出したRNAを用いてNorthern blotを施行したところTSP1の発現を認めた。これらの所見は、対照血管においては認められなかった。
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