研究概要 |
心筋細胞自身が分泌する増殖因子であるCardiotrophin I(CT-1)の心肥大、心不全といった病態生理現象と如何なる関係にあるかを明らかにするため以下の動物実験を行なった。 1)ラットCT-1,mRNAをPCR法により採取した。 2)ラットの腎動脈直下の下行大動脈を結紮した圧負荷による実験的心肥大を作成した。対照群および圧負荷群において心筋を採取し、RNAを抽出し、CT-1の発現をNorthern Blot法により判定した。CT-1mRNAは結紮前より発現を認めたが結紮後1時間をpeakとして発現が亢進した。また、圧負荷5分後よりCT-1のシグナル伝達系であるJAK1,2,Tyk2のリン酸化を認め,60分で最大となった。次に、慢性の圧負荷に対し心筋におけるCT-1の遺伝子発現がどう変化するかを明らかにするため、自然発症高血圧ラットSHRおよび対照ラットWKYを高血圧発症前後の各段階4,6,8,10,13週で心臓を摘出し,同様にCT-1の発現を観察した。WKY群では4-13週にわたってCT-1の発現を認めたが,各群で発現量に有意な差はなかった。SHR群ではCT-1の発現量は4-10週では変化がなかったが,心体重比の増加を認めた13週において約5倍程度の発現亢進を認めた。SHRにおける慢性圧負荷刺激では高血圧発症期よりもむしろ心肥大発症期にCT-1の発現が亢進していた。 3)CT-1のcDNAを遺伝子組み換え法により大腸菌発現ベクターであるpGEXに挿入し、CT-1をGST融合蛋白質として大腸菌に造らせた。融合蛋白質をウサギ背部皮下に免疫し、ポリクロ抗体を作成中である。
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