1、Head-up tilt test(HUT)に関する研究実績 原因不明の失神歴を有する54例を対象とした。 (1)再現性。HUT単独で全例に失神が誘発された。30分後に再度HUTを施行し、91%(49例)に再現性をもって失神が誘発された。 (2)薬剤の急性効果。再現性のあった49例で検討した。薬剤を静脈内投与し、再々度HUTを行い予防効果を判定した。プロプラノロールは80%で、ジソピラミドは55%で、アトロピンは33%で有効であった。 (3)薬剤の長期効果。薬剤の急性効果が有効の場合、同一薬の長期経口投与の効果を検討し、34例中32例で失神発作は予防された。一方急性薬剤効果が無効であった15例で10例に同一薬を、5例では無投薬で観察したところ全例に失神発作が再発した。 以上により、HUTは予防薬の選択に有用であると考えられた。 2、HUT中の心拍スペクトル解析に関する研究実績 原因不明の失神歴を有する15例を対象とした。 心拍スペクトル解析で、副交感神経の活動指標としてHF(高周波成分)を交感神経の活動指標としてLF/HF(低/高周波成分)を用いた。失神は混合型が7例、血管虚脱型が8例であった。混合型ではLH/HFの上昇に引き続くHFの上昇直後に失神が生じ、血管虚脱型ではLH/HFの上昇直後に失神が生じHFの上昇はなかった。 このように2種類の機序が推測され、その診断治療に注意を要すると考えられた。
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