【目的】虚血・再潅流障害にともなう心筋障害の進展は、心筋酸素需要・供給のバランス変化による血流分配調節の異常が原因であると考えられる。本研究では心筋酸素需要・供給のバランス変化が局所血流調節に与える影響を検討するために、コントロール心、低酸素潅流心(動脈血PO_2=30mmHg)、および圧負荷心(左室ピーク圧30%増)の心筋内血流分布を分子血流トレーサ法によりイメージングし、微小心筋内血流分布パターンを解析した。【方法】麻酔開胸家兎の左房に、毛細血管内皮細胞のα_2受容体と結合する^3H-DMI(30μCi)を投与した後、左室自由壁の連続切片を作製した。オートラジオグラフィにより、血流分布に対応する^3H-DMIの分布イメージを得た。各イメージ毎に隣接する局所血流間の相関CAと局所血流変動係数CV(局所血流の標準偏差/平均)を求めた。分解能を順次下げた場合(粗視化)のイメージングも行い、各分解能における血流分布を評価した。【結果】低酸素潅流心CVは低酸素潅流時に減少し、この傾向は粗視化とともに縮小した。逆に、CAは低酸素潅流時に増加し、この傾向は粗視化によって増大した。圧負荷心CVは圧負荷時に減少し、この傾向は粗視化とともに縮小した。また、圧負荷時のCAは低い分解能においてはコントロール心に比して低値を示し、粗視化とともに減少する傾向にあった。【結論】心筋酸素供給の減少あるいは受容の増加により、心筋潅流は一様化に傾くことが示された。これは、心筋へのより効率的な酸素供給を目的とした局所血流調節の働きによるものと考えられる。ただし、その働きは低酸素潅流心と圧負荷心では異なり、特に圧負荷心では心筋への直接的な力学的作用によって血流一様化が抑制されていると考えられた。
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