研究概要 |
[目的]骨代謝は,全身性に循環するホルモンによって大まかに調節されるのみならず,局所性に産生されるオ-タコイドによるfine tuningsを受けている。NOもそのオ-タコイドの1つであることが,骨由来培養細胞を用いたin vitroの実験結果から示唆されるようになった。今回は,NO阻害剤の長期投与モデル(ラット)を用いて,in vivoの骨代謝におけるNOの作用を検討した。 [方法]対象:8週齢SDラット(雄)を6群に分け,4週間,以下の薬剤を投与した。 グループ1(control,蒸留水を飲用,N=16) グループ2(20mg/dl L-NAME[“非選択的"NO合成酵素阻害剤]飲用,N=5) グループ3(50mg/dl L-NAME,N=6) グループ4(80mg/dl L-NAME,N=5) グループ5(400mg/dl L-AG[“誘導型"NO合成酵素阻害剤],N=6) グループ6(400mg/dl L-AG+2g/dl L-arginineを飲用,N=6) パラメーター:体重,血圧;腰椎骨塩濃度(BMD;二重エネルギーX線吸収測定装置で定量);尿中NOx,コラゲン架橋(Pyd,D-Pyd),Cr;血中オステオカルシン,Cr,アルブミン,コレステロール。結果はANOVA(Scheffejを用いて検定した。 [結果と考察]12週齢の時点で,体重はグループ4で低め,血圧は,L-NAME投与群で(グループ2〜4)用量依存的に上昇していた。グループ4,5でBMDの有意な減少,グループ2〜5で尿中NOxの有意な低下があり,グループ5に尿中Pyd,D-Pydの有意な上昇が認められた。血中パラメーターには差がなかった。 以上から,NO合成酵素(特に“誘導型"酵素)を長期に阻害すると骨量が低下することが示された。生理的骨発育において,NOが骨吸収抑制的に作用しながら,骨代謝を調節していることが,今回のin vivoモデルではじめて示された。
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