1.Mathotrexate(MTX)は、抗炎症効果を持ち、リウマチ性疾患の治療に用いられている。従来、MTXが抗炎症効果を持つ機序として、種々の好中球機能に抑制的に働くことが報告されている。これらの研究は、無刺激の状態(Resting state)にある人末梢好中球を対象としたものであった。しかし、炎症反応の局所にあっては、好中球はなんらかの形で活性化された状態にあると考えられ、したがってMTX等の薬剤の効果を検討する際には、活性化された状態にある好中球を対象とする方が意義がある。本研究でGranulocyte colony-stimulating facotr(G-CSF)で活性化した人末梢好中球を対象として、MTXがその活性酸素産生や遊走能に与える影響を検討した。 2.G-CSFにより好中球は活性化され、fMLPで誘導される活性酸素産生や遊走能が著しく亢進する。MTX添加により、それらの機能は抑制されるが、その程度は無刺激の状態の好中球と比較して、G-CSFで活性化された好中球により顕著であった。 3.その系に、プリンヌクレオチドプールをサルベ-ジ回路(HGPRT)を通じて補填するヒポキサンチン或いはグアノシンを同時に添加すると、MTXの効果が有意に相殺された。この相殺効果はHGPRTを欠損したLesch-Nyhan症候群の患者の好中球では見られなかった. 4.本研究は、活性化された好中球の種々の機能がMTXにより強く抑制されること、及び、その作用機序の一部がプリヌクレオチドの合成抑制にあることを明らかにした。従来、活性化された好中球に対するMTXの効果を検討した研究は例が無く、上述の臨床効果を説明する上で有意義な知見である。
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