生後の血中IGFBP-3濃度は、生後日齢とともに減少し、生後30日目では最低となる。生直後の血中濃度は生下時体重と正の相関関係を認めたが、生後の低下と栄養方法・体重減少とは明らかな関係は認めなかった。早期産児においては在胎週数にしたがって上昇する傾向があり、妊娠後期の胎児発育に及ぼすIGFBP-3の生理的役割を示唆するものであろうと考えられる。新生児期の血中IGFBP-3はEIAによる測定値のみではなく、^<125>I-IGFBP-3を使用したIGF結合能においても低下していることが明らかであった。蛋白分解酵素に基づく fragment の増加は認められなかった。小児期の成長障害の原因疾患の一つであるビタミンD抵抗性クル病のモデルである低リンマウスにおいて、血中のIGFBP-3の結合能が低下していることを確認し、報告したが、本研究において作成したマウスのIGFBP-3に対する抗体を用いた検討によれば40-45kDのIGF結合能を有する分画の濃度の減少が明らかになり、さらに分解産物である30kDの fragment の濃度の増加が認められた。本疾患においてはX染色体上の蛋白分解酵素の活性調節を担うエンドペプチターゼ類似の遺伝子の異常が報告され、同疾患における成長障害に蛋白分解酵素の関与が推察された。 さらに、骨芽細胞系細胞を用いた検討において、IGF-I/IGFBP-3複合体はIGF-Iと同様に細胞増殖に促進的に作用したが、複合体の作用は細胞増殖早期に顕著に認められ、複合体投与による効果はIGF-I単独よりより低濃度から有意に認められた。さらに、IGFBP-3の細胞表面に対する特異的な結合が証明され、この特異的結合は増殖早期に著明で細胞増殖とともに激減した。IGFBP-3はIGF-Iの細胞表面への結合を増加させることにより、細胞増殖早期において、IGF-Iの作用に促進的に作用することが示唆された。
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