目的 シスプラチン耐性神経芽腫の分化能と分化誘導後の薬剤感受性を検討した。 材料 シスプラチン耐性神経芽腫再株KP-N-RT (BM1) R2(以下BM1R2)と親株KP-N-RT (BM1)(以下BM1)。BM1R2はカルボプラチン、ビンクリスチン、アドリアマイシン、VP16に交差耐性を示す。 方法 1.BM1、BM1R2に10^<-5>Mの合成レチノイド(E5166)と10^<-3>Mのdibutyrylcyclic AMP (dbcAMP)を5日間添加し、分化誘導した。 2.分化誘導後のシスプラチンおよびカルボプラチン感受性をtetrazollum dye assay (WST-1 assay)で検討した。 結果 1.BM1、BM1R2ともにE5166、dbcAMPのいずれによっても分化誘導された。分化誘導に伴う増殖抑制は、BM1、BM1R2ともにE5166、dbcAMPのいずれで分化誘導した場合も70%前後で統計学的有意差はなかった。 2.BM1R2のシスプラチンに対する耐性はE5166で分化誘導すると増強され(IC_<50>で1.5倍、p<0.05)、dbcAMPで分化誘導すると逆に減弱した(IC_<50>で0.46倍、p<0.01)。また、カルボプラチン耐性においても同様の変化を認めた(E5166 : IC_<50>で1.8倍、p<0.05、dbcAMP : IC_<50>で0.52倍、p<0.05)。親株BM1はE5166、dbcAMPのいずれで分化誘導してもシスプラチン、カルボプラチン感受性に統計学的に有為な変化はなかった。 考察 BM1R2がE1566、dbcAMPで親株と同様に分化誘導されたことから、薬剤耐性の神経芽腫でも分化能を持つと考えられた。しかし、BM1R2をE1566で分化誘導した場合にはシスプラチン耐性は増強したことから、レチノイン酸による分化誘導療法の臨床応用は注意が必要と考えられた。
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