先天性N-結合型糖鎖転移不全症候群は、糖タンパク質糖鎖の構造異常の異常に起因する疾患であり、病因として糖鎖合成系あるいは分解系の異常が考えられるが、生化学的検討では病因が明らかとなっていない。糖鎖転位酵素は、ポリペプチドへの糖鎖転移の中核を担う酵素で、その機能低下が病因である可能性も考えられ、分子遺伝学的検討を行っている。我々は、これまで、糖鎖転位酵素の48kDaサブユニットのcDNAおよびgenomic DNAをクローニングし、患者における変異を検討したが、患者において発現は正常で、点変異、欠失は検出されなかった。 本年度は、48kDaサブユニットgenomic DNAの構造解析を進め、特に、その遺伝子の上流のプロモーター領域の塩基配列を明らかにして、転写調節機構を解析した。また、染色体上の位置を1p36.1に同定した。 一方、糖鎖転位酵素のその他のサブユニットであるRibophorin IおよびIIは、cDNAが判明している。先天性N-結合型糖鎖転移不全症候群にいて、これらのサブユニットの遺伝子異常の有無を検討するため、genomic DNAのクローニングを行っている。ヒトcosmidlibralyより、cDNAをプローベとしてクローニングしたところ、それぞれのgenomic DNAを含むクローンが検出された。それらのcosmid cloneを制限酵素処理して、plasmid DNAにサブクローニングし、cDNAをプローベとして各遺伝子領域を含むサブクローンを検出し、塩基配列を決定している。
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