最近我々は、臨床的にアレキサンダー病と考えられる症例にTSH単独欠損を見いだしてきた。そしてTRH連続負荷を含む各種下垂体負荷試験の結果より、TSH単独欠損であることを証明した。通常先天性TSH単独欠損症は臨床的にCretinismを呈するが、本症例ではCretinismとしての症候は認められず、従って本症例におけるTSH単独欠損は後天的に発生した可能性が大きいと思われた。 よって今回の研究では、進行性脳白質性疾患であるアレキサンダー病の遺伝的責任座位を決定することとして進めてきた。アレキサンダー病にTSH単独欠損病を合併した19才男児において、3番染色体短腕の部分欠損が認められたので、3番染色体短腕のACクローンを用い、サザンブロット法を用いて責任座位を検討した。3p-21領域に存在するコスミドクローンSCCL、GCPS、ACf1、GLB1、RCCを用いて患者染色体とFISK法を用いて検討したところ、RCCをのみ陰性を示した。そこでこのRCC領域を含むYACクローンを100作製し、さらにPISH法を用いて患者cDNAライブラリーをスクリーニングした。このうち、陰性を示したYAC-11、YAC-56、YAC-83を現在塩基配列を決定中である。 以上より、アレキサンダー病の遺伝子座位が本研究により現在決定しつつあることが明らかになった。
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